【おすすめ本紹介:vol.2】私大男子の書評してみた!【満願】
こんにちは、ぷらぱです。
書評2冊目です。
今回もネタバレをできるだけ回避してレビューしていきます。
第二弾は米澤穂信氏の「満願」です。
それでは、どうぞごゆるりと。
基本情報
題名:「満願」
著者:米澤穂信氏(よねざわ ほのぶ)
ページ数:(解説を除き)415ページ
出版社:新潮文庫
価格:税抜き670円(AmazonではKindle版670円・文庫版724円)
ジャンル:ミステリー短編集
背表紙あらすじ
「もういいんです」人を殺めた女は控訴を取り下げ、
静かに刑に服したが……。
鮮やかな幕切れに真の動機が浮上する表題作をはじめ、
恋人との復縁を望む主人公が訪れる「死人宿」、
美しき中学生姉妹による官能と戦慄の「柘榴」(ざくろ)、
ビジネスマンが最悪の状況に直面する息詰まる傑作「万灯」他、
「夜警」「関守」の全六編を収録。
史上初めての三冠を達成したミステリー短編集の金字塔。
山本周五郎賞受賞。
(満願文庫版:背表紙より)
感想
前編通した感想を一言で表すと「不穏」でした。
各篇の最後、主人公にぼんやりと提示される未来が不明確で未確定。
ここから、各篇についてあらすじと感想を書いていきます。
夜警
あらすじ……主人公の柳岡巡査部長は部下の葬式に出ていた。
切りかかってきた犯人に銃で応戦するも、命を落とした部下。
「正義感のある男ではない」遺族はそう証言する。
彼はなぜ警官になったのか、なぜ死んだのか?
感想……人間の心理と、立場に合わせた行動がまざまざと描かれている感じです。
どこか狂気じみた行動原理なのに、理解できてしまうことにぞっとします。
文字から想像する状況に深い暗さが感じられます。
死人宿
あらすじ……恋人との復縁のため、山奥の温泉宿に訪れた主人公。
そこにはすっかり仕事に慣れた「佐和子」の姿が。
「ここは山あいの火山ガスが「死にたい人」の間で評判な死人宿」
そこで見つかる遺書の落とし物。
主人公は自殺を防ぐため、思考を始める。
感想……「まじか~~……」ってなりました。
表題作「満願」と並んで好きです。
主人公の(元)恋人である佐和子が、
物語を何倍にもいい感じに引き立てます。
個人的には終盤、風景描写と感覚描写のコントラストに注目です。
柘榴(ざくろ)
あらすじ……容姿に恵まれた主人公「さおり」は大学で知り合った佐原成海と
婚約する。しかし、佐原は決まった職に就かない。
二人の娘が産まれ、高校受験が控えたある日、
さおりはついに離婚の決断をする。親権を争うさなか、
職に就くさおりが圧倒的に有利と思われたが……。
感想……動機は、裏の理由の、その奥。って感じです(←何言ってんの……)
続きが読みたい。
どうしてそうなったか、そして理由は?さらに動機は?
読み進めるごとに「不穏」な何かが胸を満たしていきます。
男性は「意外」を、女性は「共感」を感じそうだと思いました。
万灯
あらすじ……日本のエネルギー資源のため、海外で取引を行う主人公。
彼は現在に至るまで、二人の人間を殺害していた。
最善を尽くしてきた男が立たされた最悪の窮地。
「仕事と幸福」についてを話に添えながら、後悔が回る。
感想……主人公の独白から始まる本篇。殺人のことが語られる。
「最初に言っちゃっていいの?」と思いつつも、
それに至った経緯が気になって進んでいきます。
外国の僻地で静かに語られる「幸せ」と主人公の「仕事観」も、
ストーリーに味を加えてます。
関守
あらすじ……フリーのライターとして活動する主人公。
都市伝説の記事を書いてほしいと頼まれ、現場の取材へと足を運ぶ。
現場の峠付近にはおばあさんが一人で営む休憩所があり、
たびたび起こる事故について事情を知っているようだが……
感想……「まじか~~……(その2)」
都市伝説の話が出てきてますが幽霊は関係ありません。
やるせない気持ちになるのが50%。ぞっとするのが50%。
終盤に向けて加速する違和感が、身に迫りながら締められます。
満願
あらすじ……弁護士を志す主人公「藤井」と、下宿先の女将さんの話。
昭和の時代、貧しい中を共に過ごした二人。
将来への不安と目の前に迫った危機。
感想……死人宿の感想にも書きましたが、六編の中で一番好きです。
続きが読みたい!
打算と動機。必然に起こされた行動。って感じです。
全篇通して・・・
再度言いますが「不穏」!
物語後の主人公たちはどこへ向かうのか。どんな感情を抱いていくのか。
作品全体に漂う不気味な雰囲気も、読後感に大きく影響しているような。
評価
主人公が一篇一篇別の、まさに短編集って感じです。
結果がすぐに訪れるので、読書慣れしていない人にも読みやすかったです。
ぜひ頭の中に状況を思い浮かべて読んでください。
個人的評価は
100点中…………94点!
おすすめ度、星5!(満点は星5)
終わりに
上記の感想はあくまで個人的なものです。
また、特定個人の誹謗中傷や議論を目的にしたものでないことを明記します。